高嶺下住宅(6軒長屋)

所在地 :愛知県東加茂郡足助町大字野林字高嶺下
 この住宅は積極的な村おこしを進めてきた足助町が、御多分に漏れない人口減少にはどめをかけるために定住促進の一環として策定した高嶺下計画のパイロットプラントして建設された仝町の職員住宅である。
 高嶺下計画は、新世紀の里山暮らしを摸索する集落構想であるが、足助町らしい住宅政策実施のため町内18ケ所の候補地の中から豊田市に近いこともあって当地区の「洞(両側を山に挟まれた谷合地のことを当地では洞と呼ぶ)」が選ばれ具体化されたものである。最大の問題点は既存の集落との調整と言われ既存のコミュニティーを尊重しながら新定住者を順次迎えようとするもので、既存の30戸に6戸程度づつ増やしていく手法がとられた。このパイロットプランに引き続いてすでに2年がかりで自然の中に住みたい人を公募して今着々と計画が進められている。
 開発は、地域住民、新住民、行政と専門家が連携しながら計画を進める住民参加型の分譲住宅造りであるが、特徴の一つは山間部でありながら雛壇式の造成による大規模開発手法を避けてこの洞の地形を生かす方法としたため結果として生ずる段差を住戸の内外に亘って利用することになった。
 住戸は職員住宅ということもあり、限られた面積(77u/戸)の中で、洞の景色をそのまま室内に取り込む工夫や、敷地の段差がそのまま室内の段差となっているために水場は同一レベルにまとめて家事動線の集約をはかったり、当地の地場産業とも言える建築技術や材料を生かす工夫は大いに評価できる。
 ただ、寒冷対策や住宅と言えどもユニバーサルデザインが問われる昨今段差の克服には今後専門家の適切な提案が必要であろう。又都市計画法に定める開発手法が当計画にふさわしくないとの理由で開発規模を同法に定める規模以下にしたとのことであるが、大規模開発を抑止する効果は認めても防災と言う観点からは若干の不安を禁じ得ない。
 今後自然と暮らすことの楽しさを望んだ住まい手を中心にこのプロジェクトが、どの様に展開されるのか大いに期待するものである。  
(森口雅文)
構  造
在来木造
階  数 地上2階
延面積 
460.37u
建築主  足助町長
 矢澤長介
設計者  大久手計画工房+
 風建設工房
 大久手計画工房
 主宰 佐々木敏彦
 風建築工房
 主宰 水野光雄  
施工者  株式会社 協友建築
 社長 梶 雄
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