麗澤瑞浪中学・高等学校第2体育館

所在地 :岐阜県瑞浪市稲津町町萩原1661
 この学園は、美しい緑につつまれ起伏に富んだ丘の中にある。その校地の奥まった高台の端に体育館らしからぬふぜいをもつ瀟洒な建物が屹立している。くの字型に配置された大小の建物の屋根は柔らかく孤を描き、遠望はまさに教会をおもわせるシンボル性のたかい建物である。
 半円形のポーチ、見上げると階段状の天井が弧を描く。エントランス・ホールに入る。三階吹きぬけのガラス屋根から落ちる光の中に、またもや階段状の天井、いや、中空にうかぶ階段が孤をえがく。突然、右手の廊下を通して響く気合の声に、ここが体育館の入り口であることを卒然と認識させられる。
 この第2体育館は1階に武道場とその更衣室他、2階にプール用更衣室、機械室、3階に温水プールと多目的ホールをもつ多層化された複合施設であるが、多層化された所以は環境保全の理念からきている。つまり、今回の敷地をきめるにあたっては、新たな自然破壊につながる開発を極力避けることを主眼に将来計画を含めて検討された。その結果、既設第1、第2両グランド境界の傾斜地が強固な岩盤上にあり、狭隘ではあるが大空間の立体化、重層化に充分対応できることに着目、開発済みのこの血を選ばれたとのことである。広大な敷地の中でこのような配慮をされた当事者の方々に深く敬意を表したい。
 さて、2階に歩を進めると二つの階段が男女それぞれの更衣室より大小のアーチを描いてエントランス上空を3階にむかう、たのしい演出である。
 ついで、温水プール室に入る。圧巻である。シリンデカルシェル〔スパン 24.6m〕が端末で二つに分かれ、上層は庇をかねた水平梁となり、下層はアーチとなって外側に軽く傾いた列柱もかるがるとささえられている。特に、アーチの作る陰影はシリンデカルシェルのもつ単調さを打ち消すとともに、リズミカルな躍動感と軽やかさを室内にうみだしている。
 なお、構造的にはシェルの応力は傾斜した列柱によってプール(水深可変800t)を受ける大梁に作用しその長期応力を軽減させる働きをしている。
 意匠と構造が見事に調和したすばらしい建物である。  
(田邉 尚美)
構  造
鉄筋コンクリート造
階  数 地上4階 地下1階
延面積 
3,286.02u
建築主  学校法人
 廣池学園
 理事長 廣池幹堂
設計者  株式会社集工舎建築
 都市デザイン研究所
 代表取締役 近角 真一
施工者  清水建設株式会社
 名古屋支店 常務執行委員
 支店長 並河 清

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