M邸

所在地 :岐阜県各務原市
 郊外の住宅地の南に下る、穏やかな丘陵地の敷地一杯に建つこのコンクリート住宅は、一見周囲との関わりを拒否するような、シェルター的印象を与える建物である。しかしながら詳細に眺めて見ると、敷地全体を囲むのは最大の居住空間を確保するための壁であり、塀であり、内部空間への導入路である。
 それは閑静な住宅地ではあるが、近くのアパートやマンションからのプライバシー確保と、生活防衛であろう。そしてその壁はそのまま内部へと導入し、直角に曲がった視線は、その度に最大効果を狙ったパースペクティブを得ている。
 この作者の特徴であろうこのパースペクティブ効果とエンドライトの手法は、なかなかのものだ。このエンドライトもトップライトからのもの、スリットからのもの、下から浮き上がるものそれぞれ演出があって、幻想的な雰囲気が漂う。
 構造的には5.45m×5.9mの空間を3つ並べ、2階建として単純な構成にし、南側に建物全体を覆う庇とテラスがシェルターとしての役割をになっている。
 この作品は構造的にもそうだが、素材やディティール、色彩の面に単純化を目指し、努力している。そしてその効果がこの建物を、すっきりした快適なものにしている。  
(田中 楯夫)
構  造
鉄筋コンクリート造
階  数 地上2階 地下1階
延面積 
312.53u
設計者  内川建築設計室
 内川敏男  
施工者  株式会社 ヤマト
 橋下眞一郎
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