鹿島町立あおば保育園所在地 :石川県鹿島郡鹿島町二の宮カ部58 |
この施設は0歳時から5歳児までの総合保育園と子育て支援室を持つ。特に注目すべき特徴は、中庭を囲む回廊が2重に構成され、下足で歩行する廊下と、上履きで歩行する廊下が並行している点である。園児は自分の保育室の前まで下足で行き、脱いだ靴を揃えてフローリング仕上げの上履き用廊下に上がり、保育室に入る。保護者は園児と一緒に下足のまま保育室の前まで行き、園内を一回りできるので、保育所の全体像を容易に知ることができる。家族同士の付き合いも自然に行われ、地域のコミュニティの場となる。また、脱いだ靴を揃えるという園児のしつけの訓練にもなっている。各保育室との前で靴を脱ぐことでそれぞれを「家」に、また中庭を取り囲む回廊で結ぶことで全体を「集落」に見立てている。このように2重回廊にした結果として、玄関や廊下に下足箱が不要となり、すっきりした玄関ホールとなっている。また、この回廊の途中にはスロープや数段の階段があり、変化を与えて園児の遊びの要素の1つにもなっている。これは、段々畑だった敷地の形状を活かして平屋の建物を地形に沿わせた結果である。回廊の一部にふれあいコーナー、図書コーナー、ままごとコーナーを設けて子供のたちのコミュニケーションを図っている。 構造は木造で、屋根を小さな切妻屋根の集合体として、そのスケール及び形状が周囲の集落の風景に調和するように配慮されている。内部には木造の小屋組みを露出させ外観と構造の関係を容易に見て取れる。内装材には地元の間伐材を多用し、ぬくもりの感じられる仕上げとなっている。 各保育室の外側には、サンデッキテラスを設け、冬の積雪時に外で遊べない場合の遊び場として使用される。非常時にはここから直接グラウンドに避難ができる。 以上の計画は設計者とユーザーが1年以上に渡り根気よく打合せを行って、話し合いの結果考え出されたものであり、ユーザーにも充分満足されている様子が伺われる。 |
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(松下 聡) | |||||||||||||
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