知立市文化会館「パティオ池鯉鮒」

所在地 :愛知県知立市上重原町間瀬口9
 パティオ池鯉鮒が田園の先に横長に立ち上がった姿に、まるで要塞のような堅固なものを感じた。表面が光沢を持つコンクリート壁面は黒の横縞が何筋も通っている。この矩形の低層部の向こうに円形のガラス壁面と矩形の固まりが見える。
 この建物へのアプローチは正面の右手前側から始まる。低層部より延長した壁面の向こう側から鈎の手に曲がり中庭へと入る。ここは光のパティオと名付けられている。通路が一度絞られるために、広場は広く感じる。正面に小ホールのホワイエ、そのガラス越しの内部に朱色の壁面が鮮やかである。場面の展開にこの建築の特徴があるなと思う。
 この広場には山車蔵が面し、山車による屋外ディスプレイがなされる。中庭から左手にエントランスホールへと通じる。ガラスの壁面を通して右手奥に緑のパティオ、左手正面に泉のパティオが望まれる。大ホールにはエントランスより壁に挟まれた通路を利用する。大ホールのホワイエは円形のガラスで囲まれた明るく開放的な空間である。泉のパティオを先ほどと反対側から見ることができる。左手には4つ目の水のパティオを見ることになる。なにしろ空間が絞られたり開かれたりの繰り返しである。
 メインホールの外壁は、円形のケーブルトラスとのことである。アルミの水平枠に対して垂直方向には無目地とし周囲への視界が自由になっている。ホワイエと客席との間の円形の壁面は光沢のある水色で、始めは浮いてしまっているようで奇異な感じであるが、壁面がかえって後々まで印象に残ってくる。
 この建物は人の動線においてほとんどパティオに開放されている。このパティオを通して天候や季節、時刻の流れを感じることができる。もともとホールは閉鎖的であるのに対して、通路等を中庭により開放的にし場面を様々に展開している。  
(松本直司)
構  造
鉄骨鉄筋コンクリート造
鉄筋コンクリート造
鉄骨造
階  数 地上4階 地下1階
延面積 
10,785.62u
建築主  知立市長
 永田太三
設計者  株式会社 日本設計
 名古屋支社
 取締役支社長 高橋 徹  
施工者  鴻池・角文・中一
 特定建設工事共同企業体
 代表者
 株式会社 鴻池組
 名古屋支店
 専務取締役支店長
 松本隆

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