長野市オリンピック記念アリーナ

所在地 :長野市北長池195
 この建築は、長野冬季オリンピックスピードスケート会場である。スケールの大きい建築であるが設計は随所にきめ細かさを感じさせる。この規模からして外観は圧迫感を与えるのが常であるが、意外にそれを感じさせない。建物の周囲に地下を掘削した時の土を盛ってあること、周囲の連峰にあわせた屋根形状になっていることが効果的である。打ち放しコンクリートの斜めの立ち上がり、その上のステンレスの山形屋根は堂々として、この建物の風格を感じさせる。土のマウンドは地下の駐車場を掘削したときのものを用い、2階の高さの客席からの直接避難を可能にしている。地下の駐車場はスペースの有効利用という意味だけでなく、スケートリンクを地面から隔離し製氷効率を上げている。ピロティーや内部コンクリートは装飾が一切なく構造美そのものである。M型の屋根を支える打ち放しコンクリートの切れ目より射し込む光が、周囲のコンコースに変化を与えている。内部のスケートリンクはいかにも記録を作るための装置といった緊張感がある機能美を感じさせる。無駄を一切許さない研ぎ澄まされた空間である。建物は長手である妻面方向に大きく開かれ視覚的に開放される。天井はカテナリー曲線の分節屋根で、地元産のカラマツ積層集成材を用い、分節の間からは光を取り入れることができる。コンクリートとカラマツ材とステンレスといったシンプルな構成である。カラマツの天井が実に軽快で下部のコンクリート面とうまくバランスし、リズム感さえある。リンクは、用途によって大きさを変化させることができるため、オリンピックの後も、スケート場に夏にはフットボール、ソフトボールなどのスポーツイベントが開催される。M型木質天井は音響面でも効果的であり音楽イベントもたびたび行われる。さらに、オリンピック記念館が館内に設けられ、長野の観光コースの一つとなり、地域の新しい核となっている。
(松本直司)
構  造
屋根:大断面構造用集成材による半剛性吊屋根
下部:鉄筋コンクリート
階  数 地上3階 地1階
延面積 
76,189.26u
建築主  長野市長
 塚田 佐
設計者  久米・鹿島・奥村・日産・
 飯島・高木
 建設共同企業体
 代表者
 株式会社 櫻井 清
 鹿島建設株式会社
 代表取締役社長 梅田貞夫
施工者  鹿島・奥村・日産・
 飯島・高木
 建設共同企業体
 代表者 鹿島建設株式会社
 代表取締役社長 梅田貞夫

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